7月15日付の日本経済新聞に、大成建設と東芝が共同で、建設現場の車両の入退場管理システムを開発したと発表された。
新しい建設現場管理の形の提案になるか。
建設現場で車両の入退場管理
記事は短いものですが、大成建設のプレスリリースによると、要点は次のとおり。
- ヘルメットに装着する、眼鏡型ウェアラブル端末を利用する
- 音声でカメラを起動し、撮影する
- 撮影した車両のナンバーを認識し、登録車両かどうかを照合する
- 音声で車両のナンバーを読み上げて照合することもできる
入場する可能性のある車両は、会社名や車種などと一緒に、あらかじめ登録してあって、ナンバーをキーにして検索するもののようです。
もしそうなら、現場に入ってきたトラックを見つけた現場監督が、こんなことをつぶやいているのかもしれません。
「立ち上がれ東芝。そして、数字をとれ。」
うそです。
大成建設のプレスリリースの資料には、「ティーゲート・カメラ、ティーゲート・サツエイ」と書かれていました。
車両の入退場管理の難しさ
上で紹介した、大成建設の入退場管理システム「T-Gate.Navi」は、眼鏡型ウェアラブル端末を採用していますので、当然、現場監督や入場ゲートに立つ警備員が装着することになるでしょう。
しかし、よく考えてみると、車両の入退場を管理するのに、眼鏡型ウェアラブル端末を装着した人間がゲートに立っている必要はありません。入場ゲート付近の台の上にマネキンの頭を置いて、これに眼鏡型端末を装着しておき、入ってくる車両のナンバーを常に認識しつづけたほうが、人件費がかからず、見落としがないシステムになると思います。
いささか、通行人から気味悪がられるとは思いますが。
それでも、入退場管理には建設現場なりの難しさがあります。駐車場のナンバープレート認識とは違った難しさがあるのです。
その1。必ずしも、同じ向きで同じ方向からアプローチしてくるとは限りません。
赤帽のトラックと、トレーラーとではハンドルの切り方が大きく異なります。カメラが固定されていると、取りこぼしが多いのです。結局、撮影範囲の前に一定時間以上映り込み、文字が認識できる程度に大きく映るように、1つのカメラだけで、位置と角度を決めるのは現実的ではありません。
その2。必ずしも、前から入ってくるとは限りません。
普通の車両なら前のナンバープレートと後ろのナンバープレートは同じですから、後進入場であっても、(アプローチの向きの難しさは残りますが)ナンバーが見えればOKです。しかし、トレーラーの場合、前の部分(トラクター部分)と後ろの荷台部分(トレーラー部分)とでは、ナンバープレートが異なります。前のナンバーを読むのか、後ろのナンバーを読むのか、ひとつのカメラで撮影するときは悩みます。
生コン車はトレーラーではありませんが、後ろのナンバープレートが車の下ではなく、上のほうについているので、これはこれでカメラの向きを決めるときの厄介者になります。
その3。必ずしも、ナンバープレートがきれいとは限りません。
泥やホコリでプレートが汚れていることもありますし、雪が付着してナンバーを隠してしまうことも多々あります。屋外でのナンバー認識ならではの難しさです。
技術屋は「ナンバープレートの認識なんて、ちょろいちょろい」と言いますが、実際に取り付けようとすると、頭を抱えます。もう、あちこちにカメラを付けちゃえ。いや、もういっそのこと、人間につけて、移動式知能カメラになってもらえ、とかになります。
まさか、T-Gate.Naviは、そのような結論から生まれた商品でないと思いますが。
はじめの一歩
ともかく、音声認識で操作をする、画像認識でナンバーを認識する、ナンバーをキーにデータベースから情報を検索する、などはこれまでにもありましたので、ここでの新しさは、それらをまとめてハンズフリーで使えるように作りこんだことです。
今回は、車両の入退場管理というわかりやすいアプリケーションですが、いろんな使い方ができそうですね。
「この職人、高所作業車の操作が危なっかしいけど、本当に免許持ってるのかな?よし、チェックしてやろう。
立ち上がれ東芝。」
実は、そんな研究があります。
スマホで顔写真を撮影すると、その人の本名や誕生日などの個人情報を表示してくれるというもの。しかも撮影された人たちのデータベースを作っているわけではないと言います。タネを明かせば、FacebookなどのSNSの公開写真から個人を特定するものなのですが、いまは顔を見られたら、名前まで分かるなんて、こわい世の中です。
建設現場では、資格保有のチェックくらいにとどめましょ。