スーパーゼネコン4社の2019年3月期決算短信から研究開発費総額を比べてみました。あと、独禁法の件も。

5月15日に鹿島の決算短信が公表され、スーパーゼネコン4社の、2019年3月期決算の決算短信が出揃いました。

売上高は、ほぼほぼ2兆円

連結売上高を比べてみます。

  • 大林組は、2兆396億円。とうとう2兆円を超えました。
  • 鹿島は、1兆9742億円。もう2兆円と言っていいですね。
  • 清水建設は、1兆6649億円。
  • 大成建設は、1兆6508億円。

大林組と大成建設とでは、連結売上高が3,900億円も違いますが、営業利益で見ると、大林組の1,554億円に対して、大成建設は1,533億円と肉薄しています。大成建設の利益率の高さが際立ちます。

建設業界は空前の好景気という割に、大林組の営業利益率が7.6%というのは、少々もの足りない印象を受けます。原価もかなり上昇しているということですね。

まあ、このあたりは、マスコミの記事のほうが充実していると思いますので、そちらをどうぞ。

研究開発費総額の比較

研究開発費の総額を比べてみました。

  • 大林組は、約120億円(12,312百万円)
  • 鹿島は、約140億円(13,968百万円)
  • 清水建設は、約130億円(12,574百万円)
  • 大成建設は、約120億円(12,471百万円)

似たり寄ったりです。もうちょっと研究開発投資を増やしてもいいような気が、以前はおおむね、売上高の0.6%程度でした。いまは売上高の 0.6~0.75%程度ということは、割合で考えると妥当なんですね。

以前の分析については、「研究開発の意気込みが透けて見える、スーパーゼネコンの研究開発投資」をご覧ください。

独占禁止法違反の課徴金の見積もり、腹づもり

4社とも、独占禁止法関連損失引当金を計上しました。その額には大きな開きがあります。

その思惑とは?

【大林組】は、前期に、約105億円(10,529百万円)を計上し、今期、2億円(204百万円)減少し、残高は約103億円(10,324百万円)となっています。流動負債 (1年以内に償還期限がやってくる負債) に計上しています。

【鹿島】は、前期は0円でしたが、今期は約87億円(8,702百万円)を流動負債として計上しました。鹿島は独禁法違反を認めていませんが、流動負債として、巨額の引当金を計上しているところをみると、そう遠くない将来の有罪を覚悟しているのかな。

【清水建設】は、前期に、20億円(2,000百万円)を流動負債として計上しました。今期は新たに繰り入れておらず、残高は約18億円(1,820百万円)となっています。この引当金の計上基準として、「独占禁止法に基づく課徴金等の支払に備えるため、支払見込額を計上しています。」と記述しています。「支払見込額」と明示されていますので、課徴金はこのくらいの規模と推測していると推測します。経常利益約1340億円から見れば、微々たるものです。

【大成建設】は、前期には、約100億円(10,693百万円)を固定負債に、今期は、そっくり流動負債に移し、さらに約15億円(1,564百万円)を戻し入れて、残高は、約91億円(9,129百万円)となっています。独占禁止法違反に問われた件について、大成建設は「本件につきましては、後半の場において、当社の主張を行ってまいります。」とコメントしています。

金額にはかなり開きがありますね。清水建設の20億円と、そのほかのざっと100億円前後。

面白いのは、大成建設の損失引当金。

最初、固定負債(償還期限が1年以上先の負債)に計上していた引当金を、流動負債(償還期限が1年以内の負債)の項目に移したこと。司法の判断が出て、課徴金支払いの可能性を、念のため、考慮に入れているのでしょう。「やっていない」と言いながらも、敗訴の可能性を考えて、引当金を計上しておかないと、投資家に対して誠実とは言えない、という判断でしょう。

ところで、さきに処分を受けた親分格の大林組と清水建設。

土木工事の民間工事にかかるものに対して、120日間の営業停止処分を受けていますが、間もなく、6月1日に終わりますね。

親分、オツトメ、ご苦労さまでした。