台風の季節が来た。台風は事前に分かるので、作った仮設構造物が壊れないように対処できる。
風荷重は何で決まるか?
ビルの施工階を覆う全天候型の仮設屋根(たとえば、QBカット工法)や、外壁工事や落下防止のための外周養生を設置した建設現場はちょくちょくあります。
台風の季節、現場監督や開発者はヒヤヒヤします。
もちろん構造設計をしていますから、強度は大丈夫なはず。でも、やっぱり心配です。
ところで、風に耐えるための構造設計はどのように行われているのでしょうか。
詳しいことは、専門書に譲りますが、風荷重は次の式で計算します。
風圧力 P = Cf・q (N/m2)
速度圧 q = 0.6・E・V02 (N/m2)
ここで、E = Er2・Gf
うーん。。。日本語で言いかえれば、
風圧力は、(1)風力係数(風を受ける構造物の形で決まる、風圧の正負と大きさ)Cfと、(2)高さ方向の分布割り増し(高いほど強くなる程度)Erと、(3)ガスト影響係数、つまり「風の息」の割り増しGfと、(4)基準風速(地域によって決まる最大平均風速)V0とで決まります。
設計の基準になる基準風速は、過去に記録された最大風速をもとに、地域ごとに30~46m/sの範囲で決められています。まあ普通の台風ならカバーしていると思います。
ちなみに、風速というのは、10分間の平均ですからね。瞬間風速はその倍くらいになることもありますよ。台風のニュースでは、最大瞬間風速50m/sなどとおどろおどろしく報じますが、それは瞬間風速ですから、「40m/sくらいの基準風速では物足りない」と思わないでください。
風力係数
このなかで、もっとも厄介なのが風力係数です。
これは、屋根の形で決まります。
さらに、閉じているのか、風上側に開口があるか、風下側に開口があるか、によっても変わります。
T-UP工法とテコレップ工法とでは、風荷重が違うということです。
「屋根と壁で構成されているとして、仮設屋根って閉鎖なの?開放なの?」
そこです!
仮設屋根は、使う材料が風を通すか通さないか、通す場合のメッシュの目の大きさはどのくらいか、シートの継ぎ目は空いているのか塞いでいるのか、仮設壁と建物外壁の隙間(の底の部分)は空いているのか、閉じているのか。。。
あぁ、不確定な要素が多すぎて、本設の風荷重の風力係数のどれを適用すればいいんだぁ?
うっかり、間違った条件を当てはめると、屋根が吹き上げられて浮いちゃうんじゃないか?
分からないときは一番危険な状態を想定しましょう。ちょっと、過剰設計になるかもしれませんが、仮設構造物なんて、必ずしも厳密に施工されるとは限りませんから、保険だと思って、結果が安全側になるように設計しておきましょう。
これで、台風が来ても、もう安心。夜中もぐっすり寝ることができます。
でもやっぱりシート外して
いや、やっぱり不安なので、電話をしましょう。
「シート、外して。。。」
台風が来る前の建設現場、解体現場の足場を見てみましょう。
シートを外して、束ねて枠組み足場に括り付けているのを、よく見かけます。
ビビってると思わないように。
台風が来るときはシートを外すことにして、過剰な設計にしないというのも、一つの工夫ですよ。