水平スライドクレーン エクスター

清水建設が旋回半径を自由に変えられる新型クレーンを発表。

クレーンは極座標系で場所を指定

みなさんが町なかの建築現場で見るクレーンは、ほとんど旋回式のクレーンです。タワークレーン、ラフタークレーンはもちろん、トラックの後ろについている荷下ろし用のクレーンもそうです。

旋回式のクレーンは、吊荷の位置(フックの位置)は、旋回中心からの水平距離と回転角度で指定できます。

そのほかのクレーンには、工場などの天井に設置してある天井クレーンや屋外に設置される門型クレーンなどがあります。天井クレーンや門型クレーンは、クレーンゲームのようなもので、前後方向、左右方向の移動でフックの位置を定めます。

さて、旋回式のクレーンは、回転角と中心からの距離でフックの位置が特定できますが、日本で一般的な起伏式のタワークレーンは、中心からの距離はブームの起伏で調整します。ブームを倒せばフックの位置は遠くになりますし、ブームを起こせば中心に近くなります。

起伏型のクレーンは、旋回するときにブームを起こせば不必要に吊荷を現場の外に取りまわすことがありませんから、日本の町なかのように狭い場所での吊荷の取り扱いには適しています。

ちなみに、欧米で見るトンボ型のタワークレーンは、ブームが水平に固定されていて、フックの位置が移動することができるようになっています。旋回すれば、大きな円を描いて旋回することになります。

水平スライドクレーン登場

ここで新しいクレーンが登場しました。

清水建設が開発した水平スライドクレーン、その名も「エクスター」です。名前は、伸びる=エクステンドあたりからの連想でしょうか。

この水平スライドクレーンでは、旋回中心からフックまでの距離は、ブームの起伏ではなく、水平なブームの長さを変えることで調整できるのです。いわゆるテレスコーピックな仕組みでブームの長さを変化させています。

で?なにがいいの?

起伏式のタワークレーンは、狭い現場で、近接して設置したときには、旋回するときにチャンバラをすることになります。いや、実際には、チャンチャンバラバラとはやりませんよ。大きな事故になりますからね。

それよりも、この水平スライドクレーンは、建設現場(施工中の建物)に仮設される全天候カバーの中で使うために作られているとのことです。つまり、全天候カバーの中ではブームを起伏することができませんから、半径を変化させながら旋回し、カバーの壁に空けた穴からブームを突き出して、資材を揚重することもできる、というわけです。

狭い日本にはいいかも

これから建設現場の作業環境を改善し、生産性を向上させようと思えば、(20年以上前にも取り組まれましたが)全天候カバーをつけるなどして、直射日光や風雨にさらされることがなく、天候による工期の不安定さを払拭するのは、ひとつの方法です。

20年前の全天候カバーを各社が開発した際には、天井クレーンをもつものもありましたし、タワークレーンを使うためにカバーを高くしたものや、屋根の外側にタワークレーンを配置して、天井カバーを可動式にして資材を取り込むものもありました。

水平スライドクレーンになれば、これらの全天候カバーとの親和性が格段によくなりますから、将来の建設業のひとつの方向性を示したことになるのかもしれません。

来年度に関西の現場に投入すると、すでに発表していますから、早ければ半年くらい先には現場に設置された様子を見ることができるようになるでしょう。

2018年、建築現場でロボットが働く!SFでしょうか。

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関西エリア在住の建設関係者の方々は、奇妙な動きをするクレーンを探してみましょう。