建設現場に夏が来る 熱中症で倒れる前に休ませよう

建設現場の夏は暑い。いや、熱い。
コンクリート打設前のデッキの上は、巨大グリル。
フラフラになって頑張る職人を見つけたら、強制的にクールダウンを。

建設業の安全対策は必須

全産業の死亡事故に建設業が占める割合は高いのです。
大手のゼネコンの建設現場であれば、死亡事故は少なくて、学校を出て大手ゼネコンに就職し、一生現場監督をやったとしても、死亡事故に遭遇することはめったにありません。

でも、まれに死亡事故は発生します。
事故連絡の書類が回ってくると、「若い奥さんと小さな子が残されちゃったよ」とか分かって、悲しくなります。
人の命は統計じゃないんです。

また、死亡事故に至らない事故は少なからず発生します。

事故の統計情報である「度数率」や「強度率」を、企業が公表することは多くないかもしれませんが、建設会社において安全対策は絶対なんです。いやほんと。

最近は、熱中症が注目されています。
ケガや墜落なら、他人が見てすぐ分かるので、救急車を呼べるのですが、熱中症は「なんか調子悪い。ちょっと休む」とか言ってる間に具合が悪くなって、手遅れになることがあるのです。

厚労省の発表している資料によりますと、年によって変動はするんですが、全産業で発生する熱中症による死亡災害のうち、3分の1から2分の1くらいを建設業が占めています。

※たとえば、平成27年は、全産業の熱中症による死亡者数29人のうち、建設業が11人を占めています。

なので、ここでひとつ、熱中症を防ぐ方法を考えてみます。

みんなで一緒に休もう WBGTを測れ

まず現場で導入されるのが、温度計と湿度計。そして、WBGT値測定器
厚生労働省や監督署などの安全を管轄する諸官庁の示した基準を満たしているかどうかをモニタリングするというものです。

WBGT値ってなんですか?

WBGT値 = 0.7×湿球温度 + 0.3×黒球温度

? よくわからないけど、気温が高いほど、WBGT値は高くなるし、湿度が高いほど(湿球温度が高いままなので)WBGT値が高くなることは分かります。

ほうほう。温湿度計やWBGT計を作業場所に設置するだけですから、わかりやすいですね。
デッキの上は、照り返しが強いから、数字以上に体力を奪われるかもしれませんが、温湿度計は目安になるでしょう。

問題点は、暑さ、湿度への耐性は、人によって違うのに、みんな同じ指標で判断されてしまうこと。
「この暑さはそろそろまずいな」となったとき、全員休ませられますか?躊躇する監督は多いでしょう。
逆に、「まだ作業中止の基準にはなってないけど、そろそろヘタってる職人いるんじゃない?」ということもあるでしょう。

あなたは休んでね 活動量計

そこで、一人ひとりの状況を判断材料にすることも考えることにしましょう。

そういえば、最近は「活動量計」なるものが、比較的安価に入手できるようになりました。

腕時計のように、手首につけておけば、心拍数や加速度などを測定してくれるもの。
走る人がよくつけてますね。

ただ、熱中症の症状として諸官庁などが示している基準は、

心拍数
体温

とその継続時間などの組み合わせで構成されているんですが、通常の活動量計では、体温までは分からないんです。

医療機器メーカーが、体表から深部体温を推定する体温計を発表したものもありますが、活動量計の形では出ていないようです。
体表温度と深部体温との関係を事前に知ることができれば、心拍数と体表温度で身体の状態を知ることができるかもしれません。

作業員一人ひとりの体調の管理ができる可能性が出てきているわけです。
大手の建設会社のなかには、こうしたデバイスを使って、作業員の体調を管理しようと試行しているところがありますね。

危なくなったら警報出すね 生体モニタリング

脈と体温をより正確に計測しようと思ったら、ちょっと面倒なんですが、胸のあたりの皮膚に直に貼り付けるタイプの生体センサーなんてものもあります。

胸につけることで、心臓の状態をより正確に把握し、心拍数は言うにおよばず、脈波をとらえることができるようになります。

ちょっと難しくなりますが、1分間の心拍数よりも、脈の間隔(RRIと呼ばれます)のわずかな変化をとらえると、分かることが多いという研究があるのです。

心臓って、同じ心拍数でも、比較的一定でリズムを刻んでいることもあれば、わずかながら短くなったり長くなったり変化することもあるそうで、そこに体の状態を読み取ることができるということらしいです。
RRIの分布と熱中症の関係を明らかにする研究が待たれます。

生体センサーで判断できない大人の事情

まだまだ進歩の途中ではありますが、技術は徐々に現れてきていて、体調の悪い人に早く気づいてあげることができるようになるかもしれません。

未来が楽しみですね。

しかし、ここに来てちゃぶ台返しですが、「値がこの範囲にあるから熱中症である」と診断することはできないんです!

それは医療行為になるんですって。

医療行為に使う生体センサーは、医療器具でなくてはならないんですって。

医療用具として厚労省の認可が必要なんですって。

だから、生体センサーの企業は、「数字は示すけど、診断はしません」としか言えないのです。

どこかの研究機関か病院で、熱中症と診断するための基準を作ってくれるといいんですけどね。

スポンサーリンク

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする