土木建機の自動運転 実験場を求め彷徨う開発者たち

鹿島が自動運転の実証実験場を整備

機械ものの開発の問題

昨日の日経新聞に、鹿島が土木建機の自動運転の実証実験場を整備したと書いてありました。神奈川県小田原市に14,000m2の敷地に、土木工事の現場を模擬するようです。

小田原市ということですから、鹿島の機械技術センターがありますね。新型機械を作っては、実験場で実証実験を通して、開発をいっきに進めようということです。

新しい機械を作っても、実現場に適用するには、さまざまな問題にぶつかります。

まず、試験的に適用する現場が多くありません。開発してから試験適用現場を探そうとすると、なかなか思うように進みません。開発中から候補現場の担当者とよく意思疎通をしておかなくては、開発してもお試しにすらたどり着きません。

つぎに、現場が見つかっても法規制で使えないことも考えられます。ロボット関連の規制では、一定出力以上の自動機械には安全上の対策、事実上、人から隔離することが要求されます。ラインに材料が乗っている工場なら対応できるでしょうが、建設現場で自動機械を隔離することなんてナンセンス。

また、厳密には法で禁止されていなくても、労働基準監督署が「いままで使ったことのない技術は使ってよいとは判断できない」と言ってしまうこともあります。そうなれば、本来禁止されていなくても、監督署に逆らってまで使うことは難しいでしょう。

自動運転などのロボット系の開発には、チューニングが欠かせませんから、それらの試験は1回きりではダメなんです。長期にわたって、調整したり、プログラムを修正したりする必要があります。ソフトウェアだけならバグを見つけて直せばいいんですが、物理的な実体をもつロボットや建機では、慣性による制動性能、地面や床と移動体の摩擦係数、機械の剛性や振動特性、等々、実物を作って動かしてみなくては分からないものが多いので、パラメタ調整は実物を動かしながら、時間をかけて行わなくてはなりません

実験場があればなぁ

そのため、多くの技術開発者が思います。

「実証実験場があればなぁ」

ダンプカーや、ブルドーザーや、振動ローラーを組み合わせて実験できる場所なんて、そうそう見つかりませんからね。実験場さえあれば、上の問題はすべて解決します。

鹿島の実験場は、土木建機の自動運転開発者にとっては、垂涎の的でしょう。

14,000m2という広さは、A4サイズ22万5000枚くらいです。なんて広いんでしょう。

A4サイズ22万枚を想像できない人は、100m×140m程度の砂場を想像してみましょう。好きなことができますよ。

ダンプカーの運転手は

発表によると、ダンプカー、ブルドーザー、振動ローラーを連携させる実験を行うとのことです。2030年には、現場1か所で建機を100台規模で運用する計画とのことです。

ブルドーザーと振動ローラーは、現場にいるので分かりますが、ダンプカーは現場の外を走ってやってきます。

そこはさすがに運転手が運転しますよね?

ということは、運転手は現場に到着すると、オートパイロットモードにして車を降りて、のんびり休憩することができるということでしょうか?

いや、そこは天下の鹿島。運転手の有効活用を考えます。

現場に到着して、ダンプカーをオートパイロットモードにして車を降りた運転手は、ちょうど現場内の運搬を終えて戻ってきた自動運転ダンプカーに乗り換え、再び現場を立ち去る

はい、ダンプカーよりも運転手を少なくすることで、より高密度な(運転手を遊ばせない)搬送計画ができるわけです。

そこまで考えているなら、おそるべし鹿島。