「いない人は返事をしろ」
修学旅行のバスの中で、先生が一度はする質問である。
笑うのは、笑いの沸点の低い小学生だけである。
ICタグを使う部材認識
未来の建設システムを考えるとき、建築物の部材をどう認識するかは基本的な課題です。
鉄骨造の建築物では、柱や梁などの構造部材は工場で製作され、トラックで建設現場に運ばれてきます。
鉄骨柱には、「1CX3Y5」のような記号がプリントされています。「第1節の柱、X3通りとY5通りの直交する場所にある」くらいの意味を表していて、これで部材が特定されることになります。 向きも書いてあって、鳶工とクレーンオペレータが協力して、部材を、正しい位置、向きに設置することができるわけです。
大梁は水平部材なので、階と、一方の端の通り芯交点(上の「X3Y5」)と、部材の方向がX方向かY方向かを表す記号で特定されます。
部材にプリントされている記号を見れば、どの部材かが分かるわけです。
当然ですが、人を介さずに部材を特定しようとすると、プリントを見て文字を認識するのではなく、次のような方法を思いつくのが普通でしょう。
1.部材にICタグを貼り付け、ユニークな識別子をつける
2.識別子に、部材の属性をあたえて、データベースに保存しておく
3.現場では、部材の識別子を読み取って、データベースに問い合わせて属性を取得する
自動認識、恐るるに足らず。
コンピュータとネットワークとICタグがあれば、部材自動認識なんて、らくちんらくちん。一件落着!
「いない人は返事をしろ」問題
ところが、実際にICタグをつけて、読み取ろうとすると、実用上の問題に突き当たります。
たとえば、こんなことが起こります。
(わかりやすくするために識別子として人名を使いましょう)
読み取った部材のリストが次のようなものだったとしましょう。
伊藤
工藤
佐藤
これからわかることは、近くで、伊藤君と工藤君と佐藤さんが返事をしたという事実だけです。
このリストに入っていない人は、近くにいないのか、返事をしなかったのか、区別できません。
部材がその場に届いていないのか、届いているけどICタグとの通信ができていないため、届いていないことになっているのか、分からないわけです。届いていないなら、何が届いていないのか、知りたいのです。(人なら、一目瞭然なんですけどね。。。)
「内藤、いるのか?いないのか?返事をしろ。おい、内藤ふざけてないで返事をしろ!」
「いない人は返事をしろ」。。。 冗談ではなくなってしまいました。
「いない人は返事をするな」問題
読み取った部材のリストが次のようなものだったとしましょう。
伊藤
工藤
佐藤
これからわかることは、伊藤君と工藤君と佐藤さんが返事をしたという事実だけです。
実際には、工藤君はちょっと離れたところにいて、まだ出番じゃないのに、耳がいいものだから、つい返事をしてしまいました。
いま使わない部材は返事をしないでください。
自動認識システムが混乱するんで。
結局のところ、
いる人は必ず返事をし、いない人は絶対に返事をしない、
そんなシステムは、ICタグでは難しいのですよ。
ほかにもタグ技術はあります。
そのうち、紹介していきます。