職人とコンピュータの橋渡し

斫り工事。
今日も遠くで響いている、見積上には存在しない、謎の工事。

街角で見かけた建物

斫り仕上げ

コンクリートの表面をあえて荒らして、表情をつける仕上げ方法もあります。
この外壁、一瞬、工事中なのかと思いましたが、足場あるわけでも、養生しているわけでもなかったので、おそらく意匠でしょう。

それにしても、これ本当に設計者が意図したことなんでしょうか。
荒らしているというより、もう斫ってます

そして、鉄筋に達しています。

鉄筋が錆びています。

錆びで汚れているところを見ると、ある程度時間が経っています。

工事中ではないんですね。やっぱり意匠なんですね。

でも、かぶり不足です。。。

斫ることがないことを祈る

斫る 「はつる」と読みます。

あの「ガガガガガガガ」というコンクリートを破砕する工事です。
せっかく打設したコンクリートを壊す事態になったのですから、現場のコンクリート担当は先輩から怒られます。

斫らなくちゃならないのは、図面を間違って描いてしまったか、コンクリートを打設したときに型枠がはらんで外形が大きくなりすぎてしまったか、でしょう。

型枠がはらんでしまうのは、とりあえず、ここでは置いといて、
間違った図面を描いてしまうのは、現場監督としては、とにかく避けなくてはなりません。(実際に描くのは、施工図屋さんてことが多いです)
コンクリートの出来形をコンクリート寸法図にきちんと表現しておけば、大工がきちんと型枠を組んでくれるのですから。

自動納まり施工図作成CADなんてないの?

CADやらBIMを使って設計図を描くことが普通になってきました。建築だけでなく、設備や仕上げも同時に検討しやすい環境ができてきましたね。

「せっかくコンピュータを使って図面を描いたんだったら、それを元に、自動的に納まりのいい施工図を作ればいいじゃん。納まらないことが分かってから斫るなんてことなくなるんじゃないの。」

そうなんです。
おそらく、そのような技術は、CADやらBIMの応用技術として、ぼちぼち出てきそうな予感がします。
その先駆け的な研究もあります。

しかし、実用に耐える自動納まり施工図作成システムは、ソフトウェア開発能力を持ち、職人からじっくり話を聞くことのできる、ゼネコン技術開発陣にこそ分があると私はみています。

ソフトウェア開発には、職人の言葉とコンピュータの言葉(すなわち、アルゴリズム)の両方を解する能力が求められます。いわば、通訳です。知的な多能工です。そんな人材、なかなかいないんですけどね。

建設業の未来を語るひとたちよ、いろんな技術を磨いておきなさい。
いつか身を助けます。

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