施工数量を求めるとき、型枠工事は面積で計上する。3D CADを使えば簡単だけど、積算基準はちょっと違う。控除したり、しなかったり、なぜでしょうか。
柱型枠の面積
壁のない、独立した柱は簡単です。
高さ方向は、スラブの天端から上の階のスラブの下端までを範囲とします。そして、柱のコンクリートに接する側面の型枠の面積が、柱型枠の面積になります。
独立柱なので、柱型枠を計算するのに考慮するのは、大梁だけになります。大梁が柱に接続する部分、つまり、大梁の小口面は型枠がいらないので、その分差し引くでしょうか。
3D CADで柱の側面の面積を幾何学的に計算すると、当然、大梁の部分は差し引かれますが、国の積算基準では、多くの場合差し引きません。正確に言えば、大梁の断面積が0.5m2を超えなければ、控除しません。
たとえば、大梁が、高さ0.8m、幅0.5mという、やや大きめのものでも、その断面積は0.4m2となりますから、柱型枠面積から控除しません。もし、柱が一辺1mの正方形断面だとすれば、(スラブからスラブまでの高さm)×4mで型枠面積が出るわけです。3D CADで計算するものより、1.6m2大きくなります。
面積で型枠工事を計量する問題
では、なんでこんなことをするの?という疑問が湧いてくるでしょう。
国の積算基準に明確に書かれているわけではないので、私感で言います。
- 計算を簡略化する
- 加工の難易度を考慮する
まず、手で計算するときの手間を省くという意味が第一義的にあるでしょう。柱型枠に限らないのですが、いちいち、細かい部分を差し引くために面積を計算するのは面倒なんです。大梁なら、まだいいですよ。長方形だし、断面リストを見れば、すぐに断面積がわりとキリのいい数字で出てきます。
いや、大梁にもいろいろなサイズがあります。さらに、大梁に接続する小梁には、もっと断面が小さく、多様なサイズがあります。
なにより、壁には、いろんな大きさの扉、窓、その他の開口部があります。いちいち、個々の面積を求めて、引き算するのは、面倒っ!
ってことになります。
面倒なので、小さい部分は無視しましょう、というのが最初の理由です。
つぎに、「じゃあ、いっそ大梁下までの面積で略算してもいいじゃん。柱の面積を考えたら、差し引かないより、大梁の高さをまるごと差し引いたほうが、実際の面積に近いじゃん。」というツッコミに対する答えが、2番目の理由です。
柱型枠の大梁との取り合い部分は、ツノ型枠と呼ばれます。部分的にノコギリで欠きこんで、その周囲に桟木を釘で固定します。つまり、加工が面倒なんです。
ツノ型枠の部分は面積は小さくなるにもかかわらず、工数は大きくなるので、少し多めに丸めたほうが、実際の費用に近くなるというわけです。
壁開口なんて、もっと面倒ですよ。窓の四方の型枠なんて、幅150〜200mm程度の細長いヤツを、窓の位置に打ちつけてなきゃいけないし、壁型枠を切り抜いたりすることもあるし、えらく面倒。面積あたりいくらっていう、同じ単価じゃ割が合わないなぁ、というわけです。
企業によっては、独自の積算基準を持っていて、民間工事についてはそれを使っていることもあるでしょう。その場合、控除の基準が異なることもあるでしょう。型枠工事業者は、そのことをきちんと把握して、単価を示すことが大事ですね。
3D CADの活用
とはいえ、もはや3D CADどころか、BIMを使わなければ、時代遅れとも思われる時代ですから、積算くらい自動にやっちゃいたいですね。型枠の面積も、厳密に幾何学的な面積を求めることも可能でしょう。
でもね。
型枠工事を面積で計量するのは、面積が費用に比例するという前提に立っている、ひとつの考え方であって、絶対的な基準ではありません。
もし、3D CADで費用を算出するのであれば、面積と同時に、加工難易度を考慮する、新しい積算方法が提案されてしかるべきです。
私の提案は、
型枠工事費用 = Σ{(型枠面積)×(面積単価) + (切断長さ)×(切断単価) + (桟木長さ)×(桟木単価)}
みたいなものなんですが。いかがですか?
これから建築を学ぶエンジニアの人たち、大工さんも納得する、未来の計算ソフト作ってください。よろしくお願いします。