協力会社の監督の過労自殺
残念な事件が起きました。
新国立競技場の建設現場で、大成建設の協力会社の若手現場監督が自殺していたと報道がありました。
超過勤務が、危険とされる月100時間をはるかに超えていて、これはもう本人の努力などでは対応できる余地は全くなかったでしょう。かと言って、専門工事業者(企業)は自社の現場監督に、「工期を守らなくてもいいから体を大事にしろ」とは言えない事情もあるでしょう。このプロジェクトは着工が大幅に遅れた経緯があり、元請け会社の要求は厳しいでしょうし、そもそも発注者の要求する納期は国際的な約束事から設定されたものですから、「間に合いません」は通らないでしょう。
詳しい報道が少ないので、いい加減なことは言えませんが、あるニュース番組では、重機が十分に調達できなかったとの愚痴をこぼしていたというものがありました。
個々の工種にかかる時間は、(施工数量)÷(1つの資源が単位時間あたりにこなせる施工数量)÷(資源量)で決まります。
施工数量は設計で決まっています。
1つの資源が単位時間あたりにこなせる施工数量は、いわゆる歩掛とか生産性とか呼ばれ、作業ごとに、ある程度の幅はありますが、おおむね決まっています。
工期を短くするには、生産性の高い資源や工法を使うか、現場の錯そうの課題はありますが、資源量を増やすしかないわけです。
本来つかうべき重機の7割しか用意できなければ、作業時間は1.4倍以上になります。同じ日数でこなすには、1日あたり1.4倍の時間動かさなくてはならなくなります。通常7時間かかるところ、10時間になるわけです。
単純な算数をえらそうに語ってすみません。
しかしながら、施工計画を立てるとき、このように理論的な工期を見積もらずに、「これまでに終わらせる」ことを前提として、「頑張るという戦略」をとることは、少なくありません。
無理のある工程であっても、それがどの程度無理なのかは、やはり現場監督は把握しておくべきだと思います。
それが、「奇跡を前提としないときの最大値」であれば「頑張る」価値はあります。
「奇跡が起きなければ成り立たない値」であれば、逆立ちしたって無理です。
可能な無理か、不可能な無理かを見極める目が大事です。
大手ゼネコンが4週8休を目指す
同じ日、大林組が建設現場で4週8休に取り組むことを発表しました。
いま、国の政策や日建連の方針などで、適正工期を求めていこうとする動きがあります。
これらの活動が実を結び、発注者が無理な工期を要求すること自体が不法行為とみなされるようになれば、少なくとも「不可能な無理」はなくなると期待できるでしょう。
若い技術者が建設業を敬遠しないようにしたいものです。