むかしは建築のオブジェクトモデルをまじめに考えていた。
RATASは何の略?
フィンランド語らしいので、なんのことか分かりません。
フィンランドと言えば、建築意匠を勉強している人にとっては、アルバア・アアルトの国だし、建築オブジェクトモデルを勉強している人にとっては、RATASプロジェクトの国です。
もっとも、何者も、ムーミンには勝てません。
ムーミンについては、テレビアニメを見ただけの人にとっては、いろいろと衝撃的なネタがあるのですが、それはそっち系の書籍を参考にしてもらうとして、ここでは建築オブジェクトモデルの話を懐かしみましょう。
RATASでググると、「Building Product Data Model」であるとか書かれています。
日本語の検索結果は、ほとんどありませんね。RATASを連発しておけば、このサイトが日本語で一番のページビューを稼げるかな?
RATAS、RATAS、RATAS、RATAS、RATAS
え?うるさい?
では、話を戻します。
RATASでググると、「Building Product Data Model」であるとか書かれています。
そうです、1990年代に、プロダクトモデルの建築版(当時は、建物モデルと呼ばれていました)がいくつか提案されていて、RATASモデルはこの分野の研究者なら一度は聞いたことがあるモデルです。
5つのレベルと2つの関係
RATASでは、建物は5つのレベルで記述されます。
- Building level
- System level
- Subsystem level
- Part level
- Detail level
このレベルに沿って、オブジェクトは、Part-of関係で結ばれています。つまり、建物を徐々に分解していって、最終的に部品にいたるつながりをレベルに対応づけているわけです。必ずしも建物は5段階のPart-of関係で記述できるというわけではなく、同じレベルのなかのオブジェクトどうしでもPart-of関係はあるのです。
説明の図をみると、単なるツリーでなく、ひとつの下位オブジェクトが複数の上位オブジェクトに、Part-ofで関係づけられているようで、いわゆるネットワークで記述するということでしょう。
さらに、同じレベルのオブジェクトどうしは、Connected-toという関係で結び付けられるようです。
オブジェクト指向の発想からすれば、オブジェクトどうしの関係性、または関連性は、モデル(スキーマ)を定義する人が名付ければいいわけですが、RATASモデルでは建築を表現する際に、よく使われるだろう2つの関係を共通に定義しておいたわけですね。他のモデルは、また別の関係名を使っています。
BIMにつながったのか
1990年代には、RATASモデル以外にもいくつか、クラスとそれらの関係を定義することで、建物や建築プロジェクトの骨格を提案する試みがありました。これらの努力が、直接的にせよ間接的にせよ、STEPやIFCなどの標準化に寄与したのだろうと推測しています。
ただし、いわゆるBIMソフトといわれる製品がこれらから出てきたのかと言えば、必ずしもそうではないかもしれません。2、3のソフトしか見たわけではありませんが、内部のデータベースを見たとき、属性にCADの名残が残っているものがありました。たとえば、「柱」オブジェクトに「ハッチング」や「線の色」のような属性が入っているとかね。(最近確認していないので、いまとなっては昔話かもしれません)
とはいえ、いまのBIMソフトは内部的に建築のオブジェクトをそれなりに実装しているように思います。
1980年代~90年代の研究者の人たち、あなた方の努力は決して無駄にしません。どうぞ、安らかに。
(いや、まだ死んでないだろ…)