BIMの前には何があった?建物モデルの変遷(2)IFC

IFCを単なるデータ交換に使うのはもったいない。
IFCsrv ActiveXオートメーションでIFCモデルをグリグリ使うこともできる。

IFC

前回、STEPについて解説しました。

STEPは国際標準として規格化が進められました。役所の手続きに則って標準化をやろうとすると、勢いがそがれるのは常でして、STEPの国際標準化はなかなか進んでいなかったと聞いています。そこで、業界主導で建物モデルの標準化を進めようとした動きがIFCを生み出したわけです。このとき、IFCをリリースしたのが、IAI(International Alliance for Interoperability)、現在buildingSMARTと呼ばれる組織です。STEPの策定メンバーとIFCの策定メンバーは、けっこう重複していると聞いたことがあります(実際、どうなんでしょう)。

さて、IFCとは?

IFCは、Industry Foundation Classesの略ですが、建物データの交換のためのクラスライブラリです。

STEP同様、建物の要素(クラス)やその属性を定義するものです。そして、STEPを引き継ぐように、IFCモデルの記述は、STEPの活動から生まれたEXPRESS言語で記述されますし、データ交換にはPart21形式のファイル(または、同等の記述内容をもつXML形式ファイル)を使います

STEPはSTEPで国際標準になっていきますが、IFCへの展開も含めて、建物モデル定義の活動が実を結んでよかったです。

IFCをプログラムに組み込んで使う

プログラムを書ける人たちから見ると、IFCには注目する点があります。自作のプログラムで、IFCモデルを読み込み、更新し、出力することができるActiveXコンポーネントがあるのです。

IFCsvr(IFCサーバーと読みます)というDLL(ダイナミック・リンク・ライブラリ)がそのコンポーネントです。ちょっと詳しい人には、ActiveXオートメーションのDLLだと言ったほうが、分かりやすいでしょうか。

簡単に言えば、マイクロソフトのプログラミング環境に組み込んで使うことができる、プログラムの部品といったところです。

自分が作るプログラムの中で、IFCsvrを組み込んでしまえば、それを介して、IFCファイルを開いて、部材や属性を検索したり、属性値を変更したりすることができます

IFCのモデルはよくできていて、必要とあれば、自分の作るアプリケーションに独自のデータを追加して使うことができます。モデルが柔軟に設計されているぶん、その設計思想や扱い方をしっかり理解する必要はありますが、かなり自由な使い方が可能です。

私が知っているものでは、大林組がシールドトンネル工事のデータの受け渡しをIFCを使って試行した事例があります。これについては、興味深い取り組みだと思いますので、あらためて紹介したいと思います。

そのほか、IFCsvrの活用について検索すると、設備工事を専門とする須賀工業が解説した記事などが引っかかることがありますが、これら以外のうまい実装を私は寡聞にして知りません。

なにか見つけたら紹介します。

IFCsrvの生みの親

IFCはよく設計されていますし、それを簡単に使うためのDLLまで提供されているので、使おうと思えば、活用の可能性は広いと思います。

そこまで便利なプログラミング環境、IFCsvrを作ったのは、日本の研究者、セコムの足達嘉信氏です。

足達氏はフィンランドのVTTという研究所(日本でいえば、産総研みたいな感じなのかな)に滞在してIFCについて研究していたようで、紛れもなく日本で一番IFCに近い人です。というか、歩くIFCです。

セコムは基本的には警備会社ですからね。ちょっと建設業とは違う分野の会社にいますが、建物は警備の対象であるわけで、それを情報技術に乗せるのはひとつのソリューションになるわけです。

とにかく、足達氏は建物モデルの設計に関してはキーマンですね。建設業界は頼っています。これからのさらなる活躍を期待しています。