建設現場で安全は、基本で最優先と言いながら、費用をかけたがらない業者も多い。でも、生産性向上と安全性向上とは両立できるという意見も多い。
技術者には何ができる?
建設業の災害事情
2016年の建設業の労働災害による死亡者数が、1948年に統計を取り始めて以来初めて、300人を下回ったそうです。労働災害死者数はどんどん減ってきて、大手のゼネコンでも死亡事故は、せいぜい年間数件といったところでしょう。
安全統計は1月から12月がひと区切りなので、12月にその年初めて死亡災害が発生したりすると、安全担当部長は頭をかきむしることになります。
「死亡事故ゼロ達成」が指の隙間からこぼれ落ちるのを悔しがるのも分かりますが、それよりも、死亡災害がなくなる日がはやく来るよう努力をしましょう。
技術者にもできることはあります。
たとえば、トンネル工事を考えましょう。
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危ないところの作業を減らせばいいんだ
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重機を使って代替すればいいな
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重機を取りまわすためには、トンネルの断面を大きくしなきゃ
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断面が安定する掘削技術を開発しよう
つまり、掘削技術を開発して生産性を向上させることが、結果的に機械の利用を促進し、さらなる生産性の向上と安全性の向上を達成することができるのです。
いささか、できすぎのシナリオを挙げてしまいました。
建設の自動化
建設業は、毎回毎回違う場所で、違うものを造ります。工種の組み合わせは似たようなものだったとしても、敷地も造る対象も違うものだし、空の下で天気に身をゆだねながらの生産活動になるので、工場での繰り返し生産のような自動化が難しいんです。
これまでにも、建設業では機械化、自動化の努力が行われてきました。1990年台のはじめ頃には、ゼネコン各社が自動化施工、全天候施工を掲げて技術開発を行いました。最近では、ICTを活用した設計や施工管理の効率化を追求する動きもあります。
いまは、機械について書きますね。
建設現場で使われる機械には、クレーンやショベルカーやトラックや掘削機など、様々なものがあります。
とにかく重量があるので、動きに巻き込まれたら大事故につながります。
そこで、機械の安全化の3原則があります。
1.本質安全の原則
2.隔離の原則
3.停止の原則
簡単に言えば、「危なくないように作っておき、動かすときは人を近づけず、人が近づくときは止める」ということ。
これからの知能化建設機械
しかし、技術者は「危ないなら離れておけ」では満足しません。
だって、機械が動いている周りでは人が作業できないってことでしょ?
機械と人が一緒に協調して作業ができるものを考えたら、もっと生産性が上がるかもよ。
そうです。
いま、機械と人の関係は、いっしょに働くところに移りつつあります。
そのためには、機械はより賢くなることが求められます。
個別の解説は、つぎの機会に譲りますが、いま建設業で開発されている機械は、さまざまなセンサーで周囲の状況を把握し、人工知能を使って判断し、安全に作業をこなす、そんなものを求め始めています。
キーワードは、Safety2.0。
さまざまな能力を活かすチャンスです。
ガテンばかりが建設業ではありません。